2017年02月24日

聴かずに死ねるか(82)Nicki Parrott – Beyond the Sea

『La Mer(ラ・メール)』(1943年)はフランスの何でも屋Charles Trenet(シャルル・トレネ)が書いた曲。戦後(46年)、本人自身が歌って大ヒットした。

 一方、アメリカでは24歳のポップスターBobby Darin(ボビー・ダーリン)の歌で大ヒット(1959年)。作詞家Jack Lawrence(ジャック・ローレンス)が新たに英語で作詞したもので、曲タイトルも『Beyond the Sea』と異なるんだけど。

 仏語『海』と英語『海を越えて』。ロマンチックの度合いは仏語の歌詞に軍配が上がるが、歌いやすさからいったら英語だから、Bobby以降、多くのミュージシャンのレパートリーに『Beyond the Sea』が加えられてきた。

 そんな中でイチ押しは、オーストラリア生まれのベーシスト、ジャズシンガーのNicki Parrott(ニッキ・パロット)。ウッド・ベースを弾きながら歌う『Beyond the Sea』は、カッコイイったらありゃしない。力強い4弦のつま弾きに艶っぽい歌声・・・世界にもあまり存在しない絶滅危惧種なのだ。1970年生まれだから、当分、大丈夫だと思うけど。

▲Nicki Parrott『Beyond The Sea』。ギタリストは左からOlli Soikkeli(オッリ・ソイッケリ/フィンランド出身)、Vinny Raniolo(ヴィニー・ラニオロ/ニューヨーク出身)。2013年、The Falcon(ニューヨーク州マールボロ)でのライヴ映像。

▲映画『Mr. Bean's Holiday(Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!)』(2007年)のクライマックシーンで、本家本元のCharles Trénetの『La Mer』が流れる。

▲Bobby Darin『Beyond the Sea』。1958〜1960年まで続いたDick Clark(ディック・クラーク)司会の『Dick Clark's Saturday Night Beechnut Show』(The Dick Clark Show)で歌うBobby。

▲イタリアのシンガー、ピアニストRaphael Gualazzi(ラファエル・グアラッツィ)が歌う『Il Mare』。『La Mer』のイタリア語版。イタリアらしく、弾むリズムで楽しそう。初のアルバム『Love Outside the Window』(2005年)に収録。

▲Jeff Lynne(ジェフ・リン)『Beyond The Sea』。イギリス生まれのJeffは、1960年代にロック・バンド「The Idle Race(アイドル・レース)」「The Move(ザ・ムーブ)」で活躍。だからノリがロックで面白い。全曲カヴァー・アルバム『LONGWAVE』(2012年)に収録。

▲Mister John(ミスター・ジョン)& Laura Zen(ラウラ・ゼン)『Beyond The Sea』。イギリスからベルギーに移り住んだMister JohnことJohn Makin(ジョン・マキン)。残念ながら2011年に死去、享年66。


posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 聴かずに死ねるか

2017年02月22日

聴かずに死ねるか(81)Marlene Markard - Arabesque

 かなり昔のことだが、入門用ピアノ教則本『ブルグミュラー25の練習曲集』-『第2番アラベスク』の弾き方アドバイスに、「ビロードの上を転がる真珠の玉のように弾け」というようなことが書かれていた。

 要するに、何かがコロコロと転がるような感じで弾けばいいのだろうが、それがビロードと真珠の玉である必要がどこにあるんだろ・・・と不思議に思った覚えがある。

 作曲したのはドイツ生まれ(1806年)のJohann Friedrich Franz Burgmüller(ヨハン・ブルグミュラー)。オペラやバレエ音楽なども作曲しているが、練習曲集だけは断トツの人気。楽しみながら学習できるように工夫したところがすごい。指の基礎練習に徹した『ハノンピアノ教本』(作曲/Charles‐Louis Hanon)とは対極にある教則本だと思う。

 さて『第2番アラベスク』。原典初版には「Allegro scherzando(速く、滑稽に)♪=152」と指定されているから、かなり軽快なテンポ。習いたての初心者にとって、指定のテンポで弾くのは夢のまた夢・・・1か月もすれば、それ以上のテンポで弾けるようになるけど。

 ところが、幼児教育に力を入れているアメリカのピアニストMarlene Markard(マレーネ・マーカード)の場合、とんでもない速さで弾き切るから、まるで「まな板の上を猛烈に転がるパチンコの玉」のような感じ。でも、いいんだな。躍動感たっぷりで心地よく、このテンポが最適なような気がしてくるのだ。

▲Marlene Markard 『L'Arabesque』。アルバム『Healing Harmony』(2008年)に収録。メンデルスゾーン、シューマン、ドビュッシー、ショスタコーヴィチなどが収録されているが、速いのはブルグミュラーだけ。

▲イタリアのピアニストFranco Di Nitto(フランコ・ディ・ネット)が弾く『Arabesque』。ほぼ指定通りの「♪=152」での演奏。速いMarleneのあとに聴くと、のんびりした感じ。

▲奏者不明『Arabeske-Arabesque』。かなりテンポの遅い演奏だが、パイプオルガンの響きがドラマチック。1分ちょっとで終わってしまうのが惜しい。


posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 聴かずに死ねるか

2017年02月20日

聴かずに死ねるか(80)Willie Nelson - Nuages

 Willie Nelson(ウィリー・ネルソン)愛用のギターは、まるで粗大ゴミの山から拾ってきたような代物。ボディ表面がデコボコしているだけでなく、サウンドホールとブリッジの間に大きな穴があいている。でも、ナイロン弦から奏でられるサウンドは、見事なほどクリアで柔らかだから、あら不思議なのだ。

 製品名は「N-20」。ペンシルベニア州ナザレのマーティンギター工場でつくられたクラシックギターである。スペイン市場への輸出用なのだが、どこでどう間違ったか、ナッシュビルのギタリスト兼修理販売屋の手に・・・それを買ったのがWillieというわけ。お代750ドル。1969年のお話。

 そんな彼が演奏する『Nuages(ヌアージュ/雲)』は、ベルギー生まれのギタリストDjango Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)が1940年に発表した曲。ジプシーの伝統音楽が色濃く反映された曲なのだが、Willieの手にかかると実にクール。

 のちに歌詞が付けられ、英語圏では『The bluest kind of blues』というタイトルになった。いずれも多くのシンガーに歌われているが、フランス語版はYves Montand(イヴ・モンタン)、英語版はNatascia Bonacci (ナターシャ・ボナッチ)がいい。もちろん、歌抜きでも優れた演奏が多い。

▲Willie Nelson『Nuages』。ギターには「Trigger」という愛称が付けられているが、これほど見た目の悪い楽器を抱えている歌手はいない。おそらく、粗大ゴミの山にも存在しないと思う。

▲本家本元Django Reinhardtが演奏する『Nuages』。スチール弦の響きをピックで拾うエレキギターを使っているから、おそらく1950年以降の演奏。アルバム『Le Meilleur de Django』(2003年)に収録。

▲Natascia Bonacci『It's the bluest kind of blues (Nuages)』。生まれは1974年、イタリアのコゼンツァ。伸びのある低音と優し気な高音が、実にいい塩梅。

▲Yves Montand『Nuages』。イタリア出身の俳優、シャンソン歌手。活躍したのはフランス。演奏も抑え目で、雰囲気はお上品。アルバム『L'Essentiel Yves Montand』(2013年)に収録。

▲Chicago Gypsy Jazz All Stars(シカゴ・ジプシー・ジャズ・オール・スターズ)『Nuages』。All Starsとはいえ、中身はイスラエルのDanny Markovitch(ダニーー・マルコビッチ/sax)とDani Rabin(ダニ・ラビン/guitar)の二人組。


posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 聴かずに死ねるか

2017年02月18日

聴かずに死ねるか(79)Joni James - Lullaby Of Birdland

 Joni James(ジョニ・ジェイムス)が歌う『Lullaby Of Birdland(バードランドの子守唄)』(1962年)は、清々しさの極致。ねっとり、まったり歌われがちな曲なのに、さらりと素直なところが心地よい。

 Joni は1952年にMGMと契約後、すぐに『Why Don't You Believe Me?』がビルボードチャートで1位に。以降、1961年まで、多くの曲がチャート入りするヒットとなった。

 ところが世の中ままならぬ。1964年に音楽業界を引退してしまった。1956年に結婚した作曲家が病に倒れて以降、1986年に夫が亡くなるまで世話をし続けたのだ。

 作曲したのは盲目のイギリス人George Shearing(ジョージ・シアリング)。20代にクラリネット奏者Harry Owen Parry(ハリー・パリー)のSextetに加わり人気を得たジャズ・ピアニスト。アメリカに移住したのは35歳のとき。その5年後(19052年)に発表した曲が『Lullaby Of Birdland』。

 ソウルフルでホットなジャズが席捲していた時代に、インテリジェンスに富むクールな感覚が目新しく、またたく間に人気曲に。さらに歌詞が付けられ、Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)や Sarah Vaughan(サラ・ボーン)などによって歌われるころには、Georgeはクール・ジャズの第一人者と呼ばれるようになっていた。

▲ポップシンガーJoni James『Lullaby Of Birdland』。アルバム『I Feel A Song Coming On』(1962年)に収録。1930年生まれだから今年86歳。

▲本家大元の作曲者George Shearingが弾く『Lullaby of Birdland』。歌詞なしでも、十分迫力あり。

▲Grethe Kausland(グレーテ・カウスラン)の歌マネ『Lullaby of Birdland』。Ella Fitzgeraldに続きSarah Vaughanも登場。Grethe は1970年代、ノルウェーのショーグループDizzie Tunesで活躍していた歌手、女優。

▲Tiffany Austin(ティファニー・オースティン) 『Lullaby of Birdland』。2015年5月23日、カリフォルニア州スタンフォード大学内CCRMA(音楽と音響のコンピュータ研究センター)ステージでの映像。演奏はMarcus Shelby Jazz Orchestra。

▲フランスのギタリストBiréli Lagrène(ビレリ・ラグレーン)『Lullaby of Birdland』。ジャンゴ・ラインハルトに影響を受けたギタースタイル。


posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 聴かずに死ねるか

2017年02月16日

聴かずに死ねるか(78)Katica Illényi - Hungarian Dance

 Brahms(ブラームス)の『Hungarian Dance(ハンガリー舞曲)』は、1巻(1〜10番)+2巻(11〜21番)の全21曲。いずれも、ジプシー音楽のエッセンスを取り入れたピアノ連弾用の小品だ。

 ピアノ連弾など、馴染みが薄くて「知らんがな」となりがちだが、オーケストラ用に編曲された「第5番」となると、誰もが知っている名曲となる。

 元々がピアノ連弾用だったから、演奏楽器を代えるのは容易。ヴァイオリンはもちろん、民族楽器ツィンバロンやギター、グラスハープなどでも演奏され、それぞれに味のある演奏を楽しめる。

 中でも異彩を放つのがブダペスト生まれのヴァイオリニストKatica Illényi(カティカ・イレイニ)。クラシック畑出身にもかかわらず、演奏スタイルは自由自在のなんでもあり。とくに「第5番」では、弟のCsaba(チャバ)をアシスタントに、まるでドリフのコントのようなドタバタコントをしながら演奏しているから愉快だ。

▲Katica Illényi『Hungarian Dance No. 5』。ジャズにも精通、タップダンスも本格派。慇懃無礼な演奏家が多いクラシック畑に咲いた型破りの紅一点。4人組(兄・弟ヴァイオリン妹チェロ)で演奏することもある

▲Claudio Abbado(クラウディオ・アバド)指揮『Hungarian Dance No. 5』。演奏はBerliner Philharmoniker(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)。残念ながら一昨年、死去。享年80。

▲映画『独裁者』(1940年)に登場する有名な床屋のシーン。チャップリン演ずる「床屋のチャーリー」が、ラジオから流れてくる『Hungarian Dance No. 5』に乗ってヒゲを剃る。何度見ても面白い。

▲“Perfessor” Bill Edwards(ビル・エドワーズ)『Hungarian Dance No. 5』。古典的なラグタイムから今どきのブルースまで、レパートリーは広範。Perfessorはニックネーム。

▲Galina Vale(ガリーナ・ヴェイル)『Hungarian Dance No. 5』。過激な演奏ぶりが魅力。演奏中、目の合ったお客にウィンクするなど、お茶目ぶりも素敵。小さいころ、神童と言われていたそうだ。リスボンでのライヴ映像。


posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 聴かずに死ねるか