2017年03月30日

聴かずに死ねるか(92)李博士 – Pon Chak

 チープなキーボードから繰り出される2拍子のサウンドに乗り、数多くの歌をつないでいくのがポンチャック。韓国大衆歌謡のスタイルの1つだ。その第一人者が1954年生まれの李博士(イ・パクサ)。

 80年代に誕生したポンチャックだが、日本で注目されたきっかけは金鳥「コックローチS」のテレビコマーシャル(1995年)に李が登場してからのこと。ハイテンションぶりに誰もが驚いたが、ちょっとの間、ブームとなった。

 Wikipediaによると、李は「韓国の観光会社が運営する観光バス」に乗車し、マイク片手に20年にわたり「ポンチャック歌手として」歌いまくっていたらしい。レパートリーはなんと「5万曲」。ときには「揺れる車内で7時間」も歌い続けていたこともあったという。

 なんだか五月蠅そうな感じもするが、歌が始まったとたん、韓国の中高年はノリノリ。中には踊り出す人もいるから、韓国人の感性にドンピシャなんだろうね。

 あらためて聴き直してみると、日本の中高年でもココロがウキウキしてくるから、驚くべきチープサンドなのだ。K-POPより、よっぽどいい。

▲李博士のポンチャック「金鳥コックローチS」のテレビコマーシャル(1995年)。『江原道アリラン』の替え歌である。

▲李博士が歌うテレビコマーシャルの元歌『江原道アリラン』。チープな雰囲気が漂うものの、スピードに乗ったメリハリの効いた2拍子がココロを打つ。「テクノ・トロット」とも呼ばれているらしい。

▲これぞポンチャック。李博士『ヤングマン』に始まり、『踊るポンポコリン』『あたしなんで抱きしめたいんだろう?』と続き、締めは『木綿のハンカチーフ』。

▲韓国の女性5人組アイドルグループCrayon Pop(クレヨン・ポップ)が歌う『Uh-ee(オイ)』(2014年)。歌詞中、「ピカッ」という言葉があるという理由でKBS(韓国放送公社)から放送不適合判定を受けた。日本語の「ピカピカ」が由来だかららしい。ポンチャックなんだからケンチャナヨ・・・とはいかなかった。

▲ポンチャック女性歌手、金惠連(キム・ヘヨン)『独島はわが領土』。島根県隠岐郡隠岐の島町「竹島」を歌ったものだ。この曲、韓国では幼稚園児でも歌えるらしい。アルバム『アッサ超特急2』(1994年)に収録。

▲カナダ在住のチョン・エリが歌う『あんまりです』。場末感たっぷりの演奏はイ・ミョンガプ(g)、チョン・ハナ(key)、クォン・スングン(d)。気になるドラムは60年代の韓国GSで活躍した大御所。1990年、カナダのトロントで収録されたもの。ボツになったらしいけど。


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2017年03月28日

聴かずに死ねるか(91)The Mop Tops - Hava nagila

 The Mop Tops(モップ・トップス)はThe Beatles(ビートルズ)のトリビュートバンド。1992年、米国パラマウントテレビジョンの人気テレビ番組『I, Elvis.(mini-series)』で集められた若者4人が結成したバンドだ。

 60年代の楽器、衣裳、ヘアカット・・・いずれもThe Beatlesに似せ、さらにサウンドもThe Beatles風だから多くのビートルマニアの支持を得ているのだが、顔はそれなり。Paul(ポール)とRingo(リンゴ)だけは及第点だけど。

 残念ながら、1997年に結成された同じくトリビュートバンドThe Fab Four(ファブ・フォー)のほうが注目されるようになってしまったが、朴訥とした味という点ではThe Mop Topsに軍配が上がる。

 そんな彼らが演奏するイスラエル民謡『Hava Nagila(ハバナギラ)』は、『A Hard Day's Night』のパロディ版『A Hard Day's Day』(2002年、監督:David Kessler/デビット・ケスラー)のクライマックスで演奏されたもの。ユダヤ教徒の成人式のシーンだ。

 日本では昭和35年頃、Harry Belafonte(ハリー・ベラフォンテ)の歌でヒット。ヘブライ語なので「ハバナギラ」しかわからないが、それで十分。今どきの中高年なら、子どもの頃に聴いたことがあるはずだ。

▲The MopTops『Hava Nagila』。サウンドはそれほど似ていないが、コンサートの様子はThe Beatlesに酷似。現在、南カルフォルニアに拠点を置いて活躍している。

▲Harry Belafonte(ハリー・ベラフォンテ)『Hava Nageela』。2枚組アルバム『Belafonte At Carnegie Hall: The Complete Concert (1959)』(1957年)に収録。演奏はThe Robert Corman(ロバート・コーマン) Orchestra。

▲オランダの指揮者、ヴァイオリニストAndré Rieu(アンドレ・リュウ) & his Johann Strauss Orchestra(ヨハン・シュトラウス・オーケストラ)が演奏する『Hava Nagila』(2010年)。楽しくなければ音楽じゃない・・・というわけで音楽会は型破り。オランダのMaastricht(マーストリヒト)でのライヴ。クラリネットのanoe Konings(マノ・コニングス)がいい。

▲1938年、エルサレム生まれのRika Zaraï(リカ・ザライ)が歌う『Hava Nagila』(1959年)。1960年以降、フランス各地で活動。今どきは自然療法家として有名。

▲明るくハッピーなインド映画(Bollywood/ボリウッド)に登場する『Hava Nagila』。ヒンディー語なのだが違和感なし。踊りもインドテイストなのだが違和感なし。不思議だ。

▲米国のパンク・ロックバンドMe First and the Gimme Gimmes(ミー・ファースト・アンド・ザ・ギミー・ギミーズ)の『Hava Nagila』。ライヴアルバム『Ruin Jonny's Bar Mitzvah』(2004年)に収録。


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2017年03月20日

聴かずに死ねるか(90)Vocal Spectrum - Good vibrations

 2006年、「インターナショナル カルテット コンテスト」(バーバーショップ・ハーモニー協会)で優勝し、見事、チャンピオンの座を占めたのがVocal Spectrum(ヴォーカル・スペクトラム)。米国ミズーリ州セントチャールズの4人組だ。

 古典からロックまで、守備範囲は広く、しかもステージが愉快。さらにTim Waurick(ティム・ワーリック/ tenor)の30秒以上も続く声の延びは圧倒的で、それに絡みつく重層的なコーラスも清涼感たっぷりだから、一度聴いたら耳を離せない。

 そんな彼らが『Good vibrations(グッド・バイブレーション)』(1966年)を歌ったらどうなるか・・・一昨年、メルボルンで開催された「Barbershop Harmony Australia」全国大会でのコーラスぶりを聴くと、やっぱり耳も離せないし、目も離せない。

 この曲、猫も杓子もThe Beatles(ビートルズ)に浮かれていた時代、全英全米のヒット・チャートの上位にランクイン。サーフ・ロック・グループBeach Boys(ビーチ・ボーイズ)の曲である。クリスタル・ガラスのような透明感あるコーラスは、オープン・ハーモニーの先駆者The Four Freshmen(フォー・フレッシュメン)を彷彿とさせ、実に清々しいのだ。

▲Vocal Spectrum『Good Vibrations』。メンバーはTim Waurick(ティム・ワーリック/tenor)、Eric Dalbey(エリック・ダルビー/lead)、Jonny Moroni(ジョニー・モローニ/baritone)、Chris Hallam(クリス・ハラム/bass)。「Barbershop Harmony Australia」全国大会での映像。迫力に驚く。

▲Beach Boys『Good Vibrations』(1966年)。本家の演奏。世界初の電子楽器Theremin(テルミン)を弾いているのはThe Glenn Miller Band(グレンミラー楽団)のトロンボーン奏者だったPaul Tanner(ポール・タナー)。

▲Beach Boysの元リーダーBrian Wilson(ブライアン・ウィルソン)の半生を描いた映画『Love & Mercy 終わらないメロディー』(2015年)で歌われる『Good Vibrations』。60年代のBrian役はPaul Dano(ポール・ダノ)

▲Beach Boys のコピーバンドThe Fendertones(フェンダートーンズ)が歌う『Good Vibrations』(2004年)。メンバーが固定ではないなど、比較的ラフなグループなのだが、演奏は実に忠実。本家が多重録音でレコーディングしている部分も、員数を増やすことで再現。見事。

▲Wilson Phillips(ウィルソン・フィリップス)『Good Vibrations』(2012年)。Chynna Phillips(チャイナ・フィリップス)とCarnie Wilson(カーニー・ウィルソン)、Wendy Wilson(ウィンディ・ウィルソン)姉妹によって結成された女性コーラスバンド。Wilson姉妹の父はBeach Boysの元リーダーBrian Wilson(ブライアン・ウィルソン)。

▲英国レスター出身のロックバンドKasabian (カサビアン)『Sesame Street & Good Vibrations』。 オーストラリアのラジオ局「Triple J(トリプルJ)」の番組『The Like A Version』のスタジオでのライヴ映像。


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2017年03月14日

聴かずに死ねるか(89)江利チエミ - C'est si bon

 江利チエミが『テネシーワルツ/家へおいでよ』でレコードデビューしたのは昭和27年。15歳のときだ。

 その5年後、『Music Life』誌(昭和32年5月号)に<人気歌手への公開状>という記事が載った。書いたのはジャズ評論家先生の大橋巨泉。

 その中で、『発音は上等とはいえませんが、初期に較べれば格段に巧くなって』と持ち上げつつ、『いつまでも日本語的英語からふっ切れないのが難でしょう』と、難クセをつけている。

 さらに『五十音的英語からアルファベット的英語になった時、貴女の唄はもっとバタ臭くなる筈です』などと、いらぬ世話をやいているからお目出度い。

「バタ臭い」とは西洋風のことだが、洋風かぶれという意も含む。日本人が日本人に向けて歌っているのだから、しょうゆ臭くて結構。今どきのジャズクラブでは、べっちょりとぬめるような英語でそれらしく歌っている女性シンガーが多いが、しらけるだけなのだ。

 同記事では、美空ひばりのことを『ジャズのセンスを持ち合わさない』と云いきってしまっているから、とんだジャズ評論家先生ではあるけれど。

 さて江利チエミ。『C'est Si Bon セ・シ・ボン』(1954年)が発売されたのは17歳のとき。東京キューバンボーイズの演奏もさることながら、チエミの素直な歌いぶりには誰もが好感を持つはず。仏語 ⇒ 英語 ⇒ 日本語 ⇒ 英語と変化するが、いずれもバターのかけらもなく、あっさり風味でいい感じ。

▲江利チエミ『C'est Si Bon セ・シ・ボン』(1954年)。SP盤(78回転)での発売。残念ながら、昭和57年に自宅マンションで脳卒中と誤嚥のため死亡。享年45。

▲Yves Montand(イヴ・モンタン)『C'est Si Bon』。イタリア出身の俳優、シャンソン歌手。活躍の場はフランス。日本でもファンが多く、昭和38年に『スター千一夜』(フジテレビ)に出演しているらしい(Wikipedia)。

▲渋さでいったらYves Montand を超すと思われるJean Claude Pascal(ジャン=クロード・パスカル)『C'est si bon』。1950年代、フランスで最も人気があった俳優、歌手。

▲恋愛コメディ映画『Miss Sixty』(2014年/ドイツ)の中で、Iris Berben(イーリス・ベルベン) & Alexander Hacke(アレクサンダー・ハッケ)が歌う『C'est si bon』。

▲Mickey Katz(ミッキー・カッツ)『C'est Si Bon』。アメリカのコメディアン、ミュージシャン。一応、フランス語で歌っているのだが、「セ・チ・ボン〜♪」だから愉快。ジャズ評論家先生が生きていたら難クセつけるかな。

▲Raphael Maillet(ラファエル・マイエ)『C'est si bon』。ヴァイオリンを弾きながら歌い、パリの街をそぞろ歩き。知らない人だったけど、俄然、興味が湧いてくる。



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2017年03月12日

聴かずに死ねるか(88)Susie Arioli - Night And Day

 Susie Arioli(スージー・アリオリ)はモントリオール出身のジャズシンガー。1963年生まれだから現在53歳。

 ジャズクラブで歌っていた頃は鳴かず飛ばすだったのだが、ギタリストのJordan Officer(ジョーダン・オフィサー)とSusie Arioli Swing Bandと名乗るようになってから人気が出た。1998年のことだ。

 人気が出た理由は、音楽を聴けばわかる。ことさらSusieの歌がいいというわけではなく、Jordanのアレンジとギターが冴えていて、独特のムードを醸し出しているからだ。

 中でも、2枚目のアルバム『Pennies From Heaven』(2002年)に収録された『Night And Day(夜も昼も)』は傑出していて、心地良さは格別。このときJordanは25歳だった。

 ちなみに『Night And Day』は、ミュージカル『The Gay Divorcee(陽気な離婚)』(1932年)のためにCole Porter(コール・ポーター)が書き下ろした曲。タイトル通り、夜も昼もアナタのことを考えてばっかりというベタベタした内容だが、Fred Astaire(フレッド・アステア)が歌うから粋な感じ。

 2年後に同名タイトルで映画化され、Fred AstaireとGinger Rogers(ジンジャー・ロジャース)のコンビが出演。邦題が『コンチネンタル』だったのは、「離婚」という言葉に神経質になったからだと思われる。

▲Susie Arioli Swing Band『Night And Day』(2001年)。歌が登場するのは2分15秒当たりから。それまではJordanのギターが雰囲気を盛り上げる。アルバム『Pennies From Heaven』(2002年)に収録。

▲ミュージカル映画『The Gay Divorcee』(1934年)で『Night And Day』を歌うFred Astaire。お相手はGinger Rogersだ。日本では、前後に再公開されたとき、副題が『離婚協奏曲』だったそうだ。

▲Joseph "Jimmy" Rosenberg(ジミー・ローゼンバーグ)『Night And Day』。1980年、オランダ生まれ。12歳から活躍しているGipsyジャズの名手。スィング感満点。

▲Wojciech Myrczek(ヴォイチェフ・ミルチェク/vo)&Pawel Tomaszewski(ポール・トマシェフスキー/piano)『Night And Day』。この人、知らなんだ。ファンになりそ。「ジャズフォーラム誌の50周年とフランク・シナトラの生誕100周年」(2016年)での映像。

▲Connie Evingson(コニー・エヴィンソン)『Night And Day』。ミネソタ州ミネアポリスを拠点に活躍するシンガー。ポップス、ボサノヴァ、ジャズ・・・なんでも器用にこなすが、いずれも艶っぽい歌いぶりがいい。アルバム『Gypsy in My Soul』(2004年)に収録。

▲Diana Krall(ダイアナ・クラール)『Night And Day』。毎度お馴染みのDiana。カナダ生まれの女性ジャズ・ピアニスト、シンガーだ。ささやくような、つぶやくような歌い方がグッド。


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