2017年03月14日

聴かずに死ねるか(89)江利チエミ - C'est si bon

 江利チエミが『テネシーワルツ/家へおいでよ』でレコードデビューしたのは昭和27年。15歳のときだ。

 その5年後、『Music Life』誌(昭和32年5月号)に<人気歌手への公開状>という記事が載った。書いたのはジャズ評論家先生の大橋巨泉。

 その中で、『発音は上等とはいえませんが、初期に較べれば格段に巧くなって』と持ち上げつつ、『いつまでも日本語的英語からふっ切れないのが難でしょう』と、難クセをつけている。

 さらに『五十音的英語からアルファベット的英語になった時、貴女の唄はもっとバタ臭くなる筈です』などと、いらぬ世話をやいているからお目出度い。

「バタ臭い」とは西洋風のことだが、洋風かぶれという意も含む。日本人が日本人に向けて歌っているのだから、しょうゆ臭くて結構。今どきのジャズクラブでは、べっちょりとぬめるような英語でそれらしく歌っている女性シンガーが多いが、しらけるだけなのだ。

 同記事では、美空ひばりのことを『ジャズのセンスを持ち合わさない』と云いきってしまっているから、とんだジャズ評論家先生ではあるけれど。

 さて江利チエミ。『C'est Si Bon セ・シ・ボン』(1954年)が発売されたのは17歳のとき。東京キューバンボーイズの演奏もさることながら、チエミの素直な歌いぶりには誰もが好感を持つはず。仏語 ⇒ 英語 ⇒ 日本語 ⇒ 英語と変化するが、いずれもバターのかけらもなく、あっさり風味でいい感じ。

▲江利チエミ『C'est Si Bon セ・シ・ボン』(1954年)。SP盤(78回転)での発売。残念ながら、昭和57年に自宅マンションで脳卒中と誤嚥のため死亡。享年45。

▲Yves Montand(イヴ・モンタン)『C'est Si Bon』。イタリア出身の俳優、シャンソン歌手。活躍の場はフランス。日本でもファンが多く、昭和38年に『スター千一夜』(フジテレビ)に出演しているらしい(Wikipedia)。

▲渋さでいったらYves Montand を超すと思われるJean Claude Pascal(ジャン=クロード・パスカル)『C'est si bon』。1950年代、フランスで最も人気があった俳優、歌手。

▲恋愛コメディ映画『Miss Sixty』(2014年/ドイツ)の中で、Iris Berben(イーリス・ベルベン) & Alexander Hacke(アレクサンダー・ハッケ)が歌う『C'est si bon』。

▲Mickey Katz(ミッキー・カッツ)『C'est Si Bon』。アメリカのコメディアン、ミュージシャン。一応、フランス語で歌っているのだが、「セ・チ・ボン〜♪」だから愉快。ジャズ評論家先生が生きていたら難クセつけるかな。

▲Raphael Maillet(ラファエル・マイエ)『C'est si bon』。ヴァイオリンを弾きながら歌い、パリの街をそぞろ歩き。知らない人だったけど、俄然、興味が湧いてくる。



posted by sankiyou at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 聴かずに死ねるか
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