2017年03月02日

聴かずに死ねるか(85)Claude Nougaro - Berimbau

 Berimbau(ビリンバウ)はブラジルの民族楽器だ。弓の下部に、共鳴器として乾燥して中身をくり抜いたヒョウタンが取り付けられていて、張られた弦をbaqueta(バケタ)と呼ばれる棒で叩く打弦楽器。音程の決定は石(ペドラ)、あるいはコイン(ドブラウン)で弦をすべらせて行なう。

 主にダンスのような格闘技カポエイラ(Capoeira)で使用されるが、それを自作曲に取り入れたのがギターの巨匠Baden Powell(バーデン・パウエル)。歌詞をつけたのが詩人、歌手、外交官、ジャーナリストなど多くの肩書を持つVinfcius De Morae(ヴィニシウス・ヂ・モライス)。タイトルは楽器名そのままの『Berimbau』(1963年)だ。

 ボサノヴァ調のリズミカルなサウンドは一世を風靡。海を渡ったフランスでは、シンガー・ソングライターClaude Nougaro(クロード・ヌガロ)がフランス語の歌詞に直した『Bidonville』(1966年)を発表。すぐに、ヨーロッパを中心にヒットした。

 決して美声とは言えないClaudeだが、渋さにおいては天下一品。残念ながら2004年3月、ガンで死去。享年74。

▲Claude Nougaro『Bidonville』。『Berimbau』と『Bidonville』、文字面は雰囲気酷似だが、フランス版は「スラム街」の意。「ビドン、ビドン〜♪」が耳に残る。おそらく1967年のTV映像。

▲Baden Powell『Berimbau』。自身の演奏。ギターでBerimbauの音を再現していて、繰り返し登場する。1967年の録音。

▲Astrud Gilberto(アストラッド・ジルベルト)『Berimbau』。イントロは本物のBerimbauの演奏。感情的にならないクールな歌い方が、逆に聴き手のテンションを上げている。

▲Mes Deux Moiselles(メ・ドゥ・モアゼル)『Bidonville』。Ghali Hadefi(ウッドベース)+Juliette Piguet(サックス)+Pascale gamonal(ヴォーカル)の3人組。雰囲気よし。

▲フランスのレゲエシーンで活躍するJahill(ジャヒル)の『Bidonville』。本場のレゲエとくらべ、かなり都会的だがグッド。アルバム『Paname Skank』(2014年)に収録。

▲Sylvain Luc(シルヴァン•リュック)『Berimbau』。Sylvainは知る人ぞ知るフランスのジャズ・ギタリスト。クールなのだが、秘められた熱情を感じる。1965年4月生まれの51歳。


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2017年03月04日

聴かずに死ねるか(86)Four Freshmen – Somebody・・・

 男性ボーカルバンドカルテットのFour Freshmen(フォー・フレッシュマン)の結成は1948年。その名の通り、大学の新入生4人組だ。

 世間の注目を集め出したのは50年代中盤。ところが以降は人気沸騰とはいかず、60年代になると、ロックバンドの台頭でビッグバンドとともに主流から外れてしまった。

 でも彼らはしぶとい。時代を経るごとに「新入生」を入れ、メンバーの新旧交代を図りつつ生き延びてきたのだ。ずばり、Four Freshmenというネーミングが功を奏したというわけ。「いつものメンバーとちゃうやんか」と言われても「フレッシュメンやさかい、かんべんな」で済んでしまう。

 というわけで、60年以上にわたり、約45枚のアルバムと70枚のシングルをリリースし続け、グラミー賞を含め6つの栄誉を受けている。

 そんな彼らが歌う『Somebody Loves Me』(2006年)は、ご存じアメリカの作曲家、ピアニストGeorge Gershwin(ジョージ・ガーシュウィン)が1924年に出版した曲。Ballard MacDonald(バラード・マクドナルド)とBuddy DeSylva(バディ・デシルバ)が歌詞を付けた。

 名古屋弁に訳せば『どなたさんか、わからんけどナモ、わたし恋されとるんだわ』だが、「どたなさん」かというと「ナニしてりゃ〜す人か、わかれへんがね♪」だから、プラス思考の明るい内容。縷々心情をひけらかし、内にこもりがちな今どきのポップスとは大違いなのである。

▲Four Freshmen『Somebody Loves Me』(2006年)。日本流に表せば22期生(2001 – 2013)。メンバーはBrian Eichenberger(guitar)、Curtis Calderon(trumpet)、Vince Johnson(base)、Bob Ferreira(drums)。ラスベガス「Suncoast Hotel」でのライヴ映像。

▲映画『Rhapsody in Blue(ラプソディー・イン・ブルー)』(1945年)で『Somebody Loves Me』を歌うTom Patricola(トム・パトリコラ)とJoan Leslie(ジョーン・レスリー)。Tomのダンスは、⇓ で紹介するGene Nelson(ジーン・ネルソン)と比較されがちだが、体形が異なるだけだと思う。

▲映画『Lullaby of Broadway(ブロードウェイの子守歌)』(1951年)。Doris Day(ドリス・デイ)とGene Nelsonのタップダンスのあと、Dorisが歌う『Somebody Loves Me』。Gershwinは1937年に脳腫瘍で死んでいるが、享年38だった。

▲アフリカ系アメリカ人のジャズシンガーソングライターAlberta Hunter(アルバータ・ハンター)が歌う『Somebody Loves Me』。後年、看護婦をするなど波乱万丈の生き方をした彼女の歌いぶりは、心に響く。

▲Chris Connor(クリス・コナー)が歌う『Somebody Loves Me』(1957年)。演奏はMilt Jackson(ミルト・ジャクソン/vib)、Stan Free(スタン・フリー/p)、Mundell Lowe(マンデル・ロウ/g)、 Milt Hinton(ミルト・ヒントン/b)、Ed Shaughnessy(エド・ショーネシー/ds)という豪華版。

▲Tony DeSare(トニー・デセア/Piano and Vocals)『Somebody Loves Me』(2012年)。7弦ギターを弾いているのはEdward Decker(エドワード・デッカー)。『Tony DeSare's show』(54 Below/New York City)で収録。


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2017年03月08日

聴かずに死ねるか(87)Trevor Exter - And I Love Her

 ウッドベースのようにチェロをつま弾き、さらに歌まで歌ってしまうのがニューヨーク生まれのTrevor Exter(トレバー・エクスター)。アンプにつながれたチェロは見事なベースサウンドだし、歌も渋いったらありゃしない。

 中でも秀逸なのは、華麗なチェロのピッチカートで始まる『And I Love Her』。ご存知、『A Hard Day's Night(ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!)』(1964年)に収録されたThe Beatles(ビートルズ)の曲だ。

 バラード風のゆったりした曲調は、派手さはないが情感たっぷり。しかも原曲では、Paul McCartney(ポール・マッカートニー)のベースギターしかアンプを通していないので、はんなりとした雰囲気が特徴。

 Trevorのチェロと歌は、はんなりはしていないものの、どことなく孤高というか憂愁というか、独特の雰囲気を醸し出していて、聴いていて心地よい。

▲Trevor Exter『And I Love Her』。チェロに魅せられたTrevor少年は、やがてブラジルに渡り、多くの若手音楽家と交流を深めた。ニューヨーク「Rockwood Music Hall Stage 2」(2013年)での映像。

▲The Beatles『And I Love Her』。映画『A Hard Day's Night』(1964年)でのシーン。さすが本家本元の演奏。


▲Harry Connick Jr.(ハリー・コニック・ジュニア)とCarla Bruni(カーラ・ブルーニ) 『And I Love Her』。Harryはニューオリンズ出身の歌手、ピアニスト、俳優。Carlaは元フランス大統領サルジコ夫人。アルバム『Your Songs』(2009年)に収録。

▲Freddie McKay(フレディ・マッケイ)『And I Love Her』。レゲエの時代を築いたジャマイカ出身の歌手。アルバム『Fire Is Burning』(1976年)に収録。

▲Mary Roos(メアリー・ルース)『Für Uns Beide (And I Love Her)』。ドイツのポップ歌手。もちろん歌はドイツ語。なんだか力が入る。アルバム『Stern Musik』(1970年)に収録。

▲Renée Claude(ルネ・クロード)『Et Te Voilà (And I Love Him)』。カナダのケベック州生まれ。だからフランス語で歌う。アルバム『Renee Claude』(1967年)に収録。


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2017年03月12日

聴かずに死ねるか(88)Susie Arioli - Night And Day

 Susie Arioli(スージー・アリオリ)はモントリオール出身のジャズシンガー。1963年生まれだから現在53歳。

 ジャズクラブで歌っていた頃は鳴かず飛ばすだったのだが、ギタリストのJordan Officer(ジョーダン・オフィサー)とSusie Arioli Swing Bandと名乗るようになってから人気が出た。1998年のことだ。

 人気が出た理由は、音楽を聴けばわかる。ことさらSusieの歌がいいというわけではなく、Jordanのアレンジとギターが冴えていて、独特のムードを醸し出しているからだ。

 中でも、2枚目のアルバム『Pennies From Heaven』(2002年)に収録された『Night And Day(夜も昼も)』は傑出していて、心地良さは格別。このときJordanは25歳だった。

 ちなみに『Night And Day』は、ミュージカル『The Gay Divorcee(陽気な離婚)』(1932年)のためにCole Porter(コール・ポーター)が書き下ろした曲。タイトル通り、夜も昼もアナタのことを考えてばっかりというベタベタした内容だが、Fred Astaire(フレッド・アステア)が歌うから粋な感じ。

 2年後に同名タイトルで映画化され、Fred AstaireとGinger Rogers(ジンジャー・ロジャース)のコンビが出演。邦題が『コンチネンタル』だったのは、「離婚」という言葉に神経質になったからだと思われる。

▲Susie Arioli Swing Band『Night And Day』(2001年)。歌が登場するのは2分15秒当たりから。それまではJordanのギターが雰囲気を盛り上げる。アルバム『Pennies From Heaven』(2002年)に収録。

▲ミュージカル映画『The Gay Divorcee』(1934年)で『Night And Day』を歌うFred Astaire。お相手はGinger Rogersだ。日本では、前後に再公開されたとき、副題が『離婚協奏曲』だったそうだ。

▲Joseph "Jimmy" Rosenberg(ジミー・ローゼンバーグ)『Night And Day』。1980年、オランダ生まれ。12歳から活躍しているGipsyジャズの名手。スィング感満点。

▲Wojciech Myrczek(ヴォイチェフ・ミルチェク/vo)&Pawel Tomaszewski(ポール・トマシェフスキー/piano)『Night And Day』。この人、知らなんだ。ファンになりそ。「ジャズフォーラム誌の50周年とフランク・シナトラの生誕100周年」(2016年)での映像。

▲Connie Evingson(コニー・エヴィンソン)『Night And Day』。ミネソタ州ミネアポリスを拠点に活躍するシンガー。ポップス、ボサノヴァ、ジャズ・・・なんでも器用にこなすが、いずれも艶っぽい歌いぶりがいい。アルバム『Gypsy in My Soul』(2004年)に収録。

▲Diana Krall(ダイアナ・クラール)『Night And Day』。毎度お馴染みのDiana。カナダ生まれの女性ジャズ・ピアニスト、シンガーだ。ささやくような、つぶやくような歌い方がグッド。


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2017年03月14日

聴かずに死ねるか(89)江利チエミ - C'est si bon

 江利チエミが『テネシーワルツ/家へおいでよ』でレコードデビューしたのは昭和27年。15歳のときだ。

 その5年後、『Music Life』誌(昭和32年5月号)に<人気歌手への公開状>という記事が載った。書いたのはジャズ評論家先生の大橋巨泉。

 その中で、『発音は上等とはいえませんが、初期に較べれば格段に巧くなって』と持ち上げつつ、『いつまでも日本語的英語からふっ切れないのが難でしょう』と、難クセをつけている。

 さらに『五十音的英語からアルファベット的英語になった時、貴女の唄はもっとバタ臭くなる筈です』などと、いらぬ世話をやいているからお目出度い。

「バタ臭い」とは西洋風のことだが、洋風かぶれという意も含む。日本人が日本人に向けて歌っているのだから、しょうゆ臭くて結構。今どきのジャズクラブでは、べっちょりとぬめるような英語でそれらしく歌っている女性シンガーが多いが、しらけるだけなのだ。

 同記事では、美空ひばりのことを『ジャズのセンスを持ち合わさない』と云いきってしまっているから、とんだジャズ評論家先生ではあるけれど。

 さて江利チエミ。『C'est Si Bon セ・シ・ボン』(1954年)が発売されたのは17歳のとき。東京キューバンボーイズの演奏もさることながら、チエミの素直な歌いぶりには誰もが好感を持つはず。仏語 ⇒ 英語 ⇒ 日本語 ⇒ 英語と変化するが、いずれもバターのかけらもなく、あっさり風味でいい感じ。

▲江利チエミ『C'est Si Bon セ・シ・ボン』(1954年)。SP盤(78回転)での発売。残念ながら、昭和57年に自宅マンションで脳卒中と誤嚥のため死亡。享年45。

▲Yves Montand(イヴ・モンタン)『C'est Si Bon』。イタリア出身の俳優、シャンソン歌手。活躍の場はフランス。日本でもファンが多く、昭和38年に『スター千一夜』(フジテレビ)に出演しているらしい(Wikipedia)。

▲渋さでいったらYves Montand を超すと思われるJean Claude Pascal(ジャン=クロード・パスカル)『C'est si bon』。1950年代、フランスで最も人気があった俳優、歌手。

▲恋愛コメディ映画『Miss Sixty』(2014年/ドイツ)の中で、Iris Berben(イーリス・ベルベン) & Alexander Hacke(アレクサンダー・ハッケ)が歌う『C'est si bon』。

▲Mickey Katz(ミッキー・カッツ)『C'est Si Bon』。アメリカのコメディアン、ミュージシャン。一応、フランス語で歌っているのだが、「セ・チ・ボン〜♪」だから愉快。ジャズ評論家先生が生きていたら難クセつけるかな。

▲Raphael Maillet(ラファエル・マイエ)『C'est si bon』。ヴァイオリンを弾きながら歌い、パリの街をそぞろ歩き。知らない人だったけど、俄然、興味が湧いてくる。



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