2017年07月24日

聴かずに死ねるか(97)Bobby Troup - My Blue Heaven

 昭和3年(1928年)、浅草オペラのボードビリアン二村定一(ふたむら ていいち)が歌ってヒットしたのが『私の青空』。同年、米国で大ヒットした『My Blue Heaven』の洋楽カバーだ。

「Heaven(天国)」を「空」としたのは作詞家の堀内敬三。日米とも家路を歌っているが、幸せいっぱ夢いっぱいのマイホームは日版では「せまいながらも 楽しい我家」、米版では「笑顔と 暖炉と 居心地のよい部屋」、なんだかほのぼのとしていて微笑ましい。

 それにしても、この時代に米国の大ヒットがすぐに日本でヒットするのは驚異的。豪華客船「秩父丸」が北米向け太平洋横断航路(横浜−サンフランシスコ)に就いたのは翌々年の昭和5年(1930年)、往復するのに1か月以上かかった時代だからだ。

 なお、米国で大ヒットを飛ばしたのはGene Austin(ジーン・オースティン)。テンポといい歌い方といい、華やかさを抑えた朴訥としたもの。大ヒットの翌年、まさか世界大恐慌が引き起こるとは思いもしなかったに違いない。

 で、今どきに聴きたいのは、大正7年(1918年)米国生まれのRobert Troup(ボビー・トゥループ)。昭和28年(1953年)に録音した『My Blue Heaven』は、アップテンポで明瞭な歌声が清々しく、家路が楽しくなりそうなのだ。

▲大ヒットから25年後の昭和28年(1953年)、Bobby Troupが歌った『My Blue Heaven』。Bobbyは俳優、ジャズ・ピアニスト、歌手、作曲家。テレビドラマ『Route 66』の主題曲を作曲したことでも知られている。

▲Gene Austin『My Blue Heaven』。レコード発売以降26週チャートイン、2週間あまり1位を持続。500万枚以上を売り上げたそうだ。もちろんゴールドディスクを受賞。テナー・ヴォーカルの元祖だ。

▲日本版『私の青空』。0:00〜二村定一、2:38〜エノケン(榎本健一)、4:55〜石川さゆり。それぞれ時代が異なるが、聴きごたえあり。原曲がいいんだろうな。

▲The Diamonds(ザ・ダイアモンズ)『My Blue Heaven』。南アフリカのビート・グループ。ヴォーカルはMike Shannon(マイク・シャノン)。昭和36年(1961年)発売のアルバム『COOL ROCK』に収録。

▲Norah Jones(ノーラ・ジョーンズ)『My Blue Heaven』。昭和54年(1979年)生まれの「ピアノ弾き語りジャズ歌手&ジャズ・ピアニスト、女優(Wikipedia)」。父親はインドのシタール奏者Ravi Shankar(ラヴィ・シャンカル)。米国在住だ。

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2017年07月22日

聴かずに死ねるか(96)松尾和子 – 恋のムード

 昭和34年、東京新宿。うたごえ喫茶「灯」はいつも満員。ガリ版刷りの歌詞本片手にロシア民謡などを歌うのだが、これが結構楽しくて、青少年&オジオバのたまり場になっていた。

 そんな頃、レコードデビューしたのが松尾和子。A面『グッド・ナイト』(松尾和子+和田弘とマヒナスターズ)、B面『東京ナイト・クラブ』(松尾和子+フランク永井)の、いずれもデュエットソングだ。

 発売当初はそれほどでもなかったのだが、翌年、『銀座の恋の物語』(石原裕次郎+牧村旬子)が大ヒットすると、引きずられるようにこちらもヒット。おかげで今どきの中高年なら、誰でも知っている曲となった。

 でもね、同じムード歌謡ならソロのほうがいい。中でも『恋のムード』(昭和37年)は逸品中の逸品。奇怪なメロディーとともに、地の底から湧き出るような松尾の声が響き渡るところなど、これぞムード歌謡の神髄といった塩梅なのだ。

 もっとも、この曲はB面。A面はテレビドラマの主題曲『七人の刑事(インストルメンタル)』。いずれも作曲は山下毅雄。『恋のムード』が奇怪なのは、流行歌には縁のないテンションコードを取り入れているから。

▲松尾和子『恋のムード』。当時、ラジオから流れていたのは『いつでも夢を』(橋幸夫+吉永小百合)、『可愛いベービー』(中尾ミエ)、『下町の太陽』(倍賞千恵子)など。時代は明るいハッピーソングを求めていたのかね。作詞は川内康範。

▲A面『七人の刑事』は、警視庁捜査一課の刑事7人の活躍を描く刑事ドラマの主題曲。警視庁の建物を空撮したオープニングで流れる。TBS系列で全国放送されたから、これも今どきの中高年なら誰でも知っている曲だと思う。

▲松尾和子『イパネマの娘』。美空ひばりが洋モノを歌ったときは、本場顔負けの圧倒的な迫力を感じたが、彼女の場合はそうでもない。上手いけど。アルバム『夜のためいき』(1966年昭和41年録音)に収録。

▲「ポスト松尾和子」と言われている真奈尚子の『誰よりも君を愛す』。ボサノバ調のアレンジが絶妙。ただし本家に似た雰囲気ではあるものの、夜のけだるさといったものはなく、透明感に満ちている。2007年発売のアルバム『逢 ai』に収録。


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2017年07月20日

聴かずに死ねるか(95)Rose - Sombre con

 Rose( ローズ)はフランス・ニース生まれ(1978年)のシンガーソングライター。もちろん本名ではなく、Janis Joplin(ジャニス・ジョプリン)の生涯を描いたアメリカ映画『The Rose』(1979年)に登場するヒロイン「Rose」から拝借。ホントはKeren Meloul(ケレン・メロウル)という。

 アルバム『Rose』(2006年)でレコードデビューしたのだが、まったくの無名だったにもかかわらず、またたく間にフランスのアルバムチャートに登場。最終的には5位まで上りつめたというからすごい。

 そのアルバムに収められているのが『Sombre con』。日本語にすると「陰鬱な詐欺」(Google翻訳)、「闇の野郎」(Baidu翻訳)となるから驚いてしまうが、要するに「このバカ!」ということ。若い世代は『pauvre con!(くそったれ)』のほうが身近らしいけど。

 軽やかなメロディーに鼻濁音たっぷりのフランス語が心地よく、何度聴いても気分はよろし。「このバカ!」なんだけどね。もちろん、作詞作曲はKeren Meloul(Rose)。

 ライヴではアコギをかき鳴らしながら歌うので、フレンチポップらしさがなくなってしまうが、それでもイイ感じ。できれば、流れるようなストリングスをバックに歌ってほしいけど。

▲Rose『Sombre con』。タイトルが「このバカ!」だから歌詞が気になるが、Google翻訳では「あなたの物理的として恩知らず あなたは彼の腕の中で育ちました ダニのように彼女をフィード♪」となるから笑ってしまう。

▲Nogent-le-Rotrou(ノジャン=ル=ロトルー)でのライヴ。同じ『Sombre con』とは思えないが、彼女にとってはこちらが本来なのだろう。2014年3月14日収録。

▲映画『The Rose』(1979年)の予告編。ヒロインRose(Janis Joplin)を演じたのはBette Midler(ベッド・ミドラー)。彼女が歌った主題歌『The Rose』はヒットした。


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2017年04月12日

聴かずに死ねるか(94)Black Eyed Peas - Mas Que Nada

 Black Eyed Peas(ブラック・アイド・ピース)はアメリカの4人組ヒップホップ・ミクスチャーグループ。今どきの中高年には馴染みが薄いかもしれないが、若者に絶大な人気があり、ヒップホップシーンの中核的存在だった。

 残念ながら2011年に無期限の活動休止を宣言したため、多くのファンをがっかりさせたのだが、このところ再結成の動きがあり、動向に注目。もっとも、全員オーバーフォーティなんだけどね。

 そんな彼らが、ブラジル音楽の巨匠Sergio Mendes(セルジオ・メンデス)とコラボしたのが『Mais Que Nada(マシュ・ケ・ナダ)』。Jorge Ben(ジョルジ・ベン)の初アルバム『Samba Esquema Novo』(1963年)に収録された曲だ。1989年以降はJorge Ben Jor(ジョルジ・ベンジョール)と改名してるけど。

 おもにブラジルでヒットした『Mais Que Nada』だが、世界的大ヒットに押し上げたのはSergio Mendes。
自らのアルバム『Sergio Mendes & Brasil'66』(1966年)に収録されたカヴァーが人気に火をつけたのだ。だから世間では、Jorge Benの曲であることを知らない人も多いらしい。

 で、熱烈なSergio MendesファンだったBlack Eyed Peasのリーダーwill.i.am(ウィル・アイ・アム)は、「メンデスはん、共同で作らへんか」と持ちかけ、出来上がったのがコラボ版『Mais Que Nada』(2006年)。

 曲の骨組みはSergio Mendesだし、Black Eyed Peasのラップ具合もほどほどだから、おそらく今どきの中高年でも、結構、好きになると思う。

▲Black Eyed Peas『Mas Que Nada』。Sergio Mendesとのコラボ版だ。アメリカのテレビネットワークNBCでのライヴ映像。アルバム『Sergio Mendes Timeless』(2006年)にも収録されている。

▲本家Jorge Benの『Mais Que Nada』(1963年)。初アルバム『Samba Esquema Novo』(1963年)に収録された曲。現在はJorge Ben jorと改名。

▲Anna Torres(アンナ・トーレス) 『Mais Que Nada』。ブラジルの女性シンガー。ちょとばかりベタつく歌い方だが、雰囲気はサイコー。オムニバス・アルバム『Essential Lounge Music by Carlos Campos & Friends』(2014年)に収録。

▲Al Jarreau(アル・ジャロウ)『Mais Que Nada』。どんな曲でも、この人が歌うと躍動感があふれるから不思議。残念ながら、先月、死去。享年76。ピアノは、先天性疾患による障害を克服したフランスのMichel Petrucciani(ミシェル・ペトルチアーニ)。

▲The Idea Of North(アイデア・オブ・ノース)『Mais Que Nada』。オーストラリアの4声アカペラグループだ。結成は1993年。オーストラリアのブリスベン「Powerhouse(パワーハウス)」でのライヴ映像(2006年)。DVD『The Idea Of North ‎– Live At The Powerhouse』(2007年)に収録。

▲The Troubadours(ザ・トルバドールズ)『Mais Que Nada』。来日公演もしたことがあるイギリスのロックバンド。いったん2009年に解散したのだが、2011年ごろから復活の兆しあり。フランスのニースで路上演奏している映像。


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2017年04月08日

聴かずに死ねるか(93)Chicha Libre - Gnossienne No.1

 Chicha(チーチャ/チチャ)は、60〜70年代に中南米ペルーで流行った音楽。トウモロコシを発酵させて造る安酒と同じ名前なのは、おもに出稼ぎ労働者に好まれたからなのだろう。

 チープなエレキ・ギターの響きに加え、これまたおどろおどろしいオルガンの音色・・・隣接するコロンビアのクンビアというリズムの影響を受けているらしいが、当時、日本で流行ったGSとは大違い。そこはかとなく郷愁をそそるサウンドは、一度聴いたら耳から離れない。

 そんなサウンドに魅せられたのがブルックリンの6人組Chicha Libre(チチャ・リブレ)。その名の通り、Chichaを前面に押し出したグループだ。

 面白いのは、当時の曲を再現するのかと思ったら、Vivaldi(ビバルディ)やRavel(ラベル)など、格式ばった古典などを料理してしまうところ。中でもErik Satie(エリック・サティ)のピアノ曲『Gnossiennes No.1(グノシェンヌ1番)』は、ただでさえ神秘的な響きが特徴なのに、見事にChichaに変身しているからアッパレ。

『Gnossiennes No.1』はSatieが24歳のときの作品。1番から3番の3曲は『3 Gnossiennes(3つのグノシエンヌ)』として有名なのだが、拍子記号も小節線も書かれておらず、要するに「お気の召すまま、気の向くまま、自由にやってんか」という挑発的な曲。見上げた根性を持った若造だったのである。


▲Chicha Libre『Gnossienne No.1』。なんだか怪しげなサウンドだが、親しみがわく。デビューアルバム『Sonido Amazonico』(2008年)に収録。

▲Pascal Roge(パスカル・ロジェ) 『Gnossienne No.1』。優雅で優しい演奏が魅力。アルバム『SATIE 3 Gymnopédies and Other Piano Works』(1984年)に収録。

▲メキシコの5人組Tocamundos(トカムンドス)『Gnossienne No.1』。ジプシースタイルなのだが、サルサやタンゴなど、ラテンアメリカのリズムも混じり合っている不思議なサウンド。

▲北野武映画『その男、凶暴につき』(1989年)のテーマ曲としてアレンジされた『Gnossienne No.1』。Satieの曲は映画に使われることが多い。

▲フランスのアコーディオン奏者Richard Galliano(リシャール・ガリアーノ)の『Gnossienne No.1』。トランペットのPaolo Fresu(パオロ・フレス)との絡みが秀逸。アルバム『MARE NOSTRUM II』(2015年)に収録。

▲トルコのTheremin(テルミン)奏者Cihan Gulbudakの『Gnossienne No.1』。Cihanはイスタンブールに住む1985年生まれの32歳。違和感なし。


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